デウス・エクス・マキナ(機械仕掛けの神)


前書き
これは、あくまでもフィクションです。どんなに信憑性があっても、実在する人物、団体、政局とは一切関係がありません。念のため。

某月某日、都内某所にある料亭。そこには、連立与党を構成する最大与党の各派代表以下、有力な幹部が集まっていた。
(ただし、最大与党党首の現首相は除く)

「さて、皆様に集まってもらったのは他でもない。党首のことなのだが。」
そう切り出したのは、『陰の党首』と噂され、現党首を擁立するのに暗躍したとされる人物であった。
「まさか、あの党首のままで総選挙を戦う、と言うことではないでしょうね。」
「そんなことをすれば、我が党は破滅だ!」
内閣不信任案を否決するための裏工作に走り、党内での不信任案賛成派の切り崩しに功があった党内中堅派閥の代表が同時に悲鳴に近い声を上げた。
「まさか。そのような事態に陥らないためにも臨時の党大会を開催し、現党首には辞任していただくか、さもなくば、解任動議にかけて、退場していただく。」
通称『陰の党首』は、冷徹に言い放った。
「それで、次の党首をどなたになさるおつもりか?」
現党首派の派閥代表代行が『陰の党首』に訊いた。
「何なら君がやってみるかね?」
冗談めかして『陰の党首』が返してきた。
「あなたの傀儡になる気はありません。それに、あんな派閥代表でも、支えるより他ありません。」
あっさりとその提案は否定された。

「この際、若手の一匹狼を党首に仕立てて、お茶を濁すというのはいかがでしょうか。」
「しかし、誰も彼も難点の方が多すぎるし、党の運営に支障を来すぞ。」
「この際、議員からではなく、外部からの民間人を党首にしてみては?」
「しかし、下手な民間人では、党を引っかき回したあげくに組織を潰されてしまう!」

現党首を辞任ないし解任に追いやるという一点では一致していたものの、では次の党首をどうするか、と言う点においては結論はなかなか出なかった。
やがて、夜も明けようとしている頃、一人の出席者がこのようなことを言い出した。
「いっそのこと………」
出席者一同がその意見になぜ同意したのかは今以て定かではない。

翌日、最大与党は各紙朝刊の一面広告で次期党首候補を宣伝することになる………






私は24時間、休むことなく執務に励みます。
私は、会期中にゴルフへは行きません。
私は、賄賂や買収とはいっさい無縁です。
私は、『情報工学と、それを支えるハイテク工業』の象徴として頑張ります。


最大与党次期党首候補
二脚歩行型ロボット P−5(提供細田技研工業)

終わり

後書き
この作品で怖いのは、筆者がこれを冗談やブラックユーモアのたぐいとして書いているのではなくて、至って大真面目に書いていることであろう。
それよりもっと怖いのは、これが、永遠の時事ネタである、と言う点なのかもしれない。