マジンガーZIP! 涙をこらえて敵を撃て!の巻


光子力研究所。マジンガーZIPはあしゅら男爵が率いる機械獣に苦戦を余儀なくされていた。
既に両腕のロケットパンチを失っており、ドリルミサイルは撃ち尽くした。彼を救援しようとしたアフロダイAは機械獣に捕らえられて身動きが出来ず、ボスボロットはいつものように五体バラバラで転がっていた。
あしゅら男爵の男性側が勝ち誇って甲児をあざ笑った。
「フハハハハハ!無様だな兜甲児!!」
「あしゅら男爵っ!さやかさんを放せッ!」
思わず甲児が叫ぶ。それをあしゅら男爵の女性側があざけって、
「いやよ、人質を放すわけがないじゃない。ま、あんたや光子力研究所が降参します、って言うのなら話は別だけどね」
「卑怯な……」
甲児が呻く。と同時に声に出さずに考えたのは、
『畜生……。ロケットパンチもドリルミサイルも使えない。光子力ビームやルストハリケーン、ブレストファイヤーじゃさやかさんごと撃ってしまう。一体どうすりゃ良いんだ……』
その甲児の苦悩を感じたかのようにさやかが叫ぶ。
「甲児くん!私に構わず機械獣を撃って!!」
それを受けて、甲児から迷いがなくなりさわやかな笑顔で言い放った。
「良し、分かった。ブレスト……」
「ちょっと待ちなさいよ!!」
必殺技を放とうとする甲児に思わずあしゅら男爵の女性側が待ったをかけ、
「へ?」
甲児は間の抜けた声を出した。そんな甲児にあしゅら男爵の女性側か突っ込みを入れ、
「こういうとき、ちょっとは『俺には撃てない!』とか、そこまで行かなくても『いや、しかし……』とか言って躊躇したりしなさいよっ!」
「そんなこと言われても……。だってさやかさんが『甲児くん!私に構わず機械獣を討って!』て言っているんだから、そこは応えてやらないと」
「そうだよねー」
甲児の返答にさやかが緊張感のない合いの手を入れる。それに対してあしゅら男爵の女性側が激昴して
「『そうだよねー』じゃないわよ!って言うか教授。あんたも娘の命がかかっている局面で何黙ってるのよ!」
といきなり弓教授に振り、
「いや、基本娘のやることに口出しはしない主義なので……」
こう返されたのを受けて、とうとうあしゅら男爵の女性側は爆発した。
「それじゃ親として責任放棄じゃないのよ!!」
後書き
元ネタになったのはこちら『主人公「撃てませぇん!!」 ←そういうのもういいから』を逆にひねったもの。
だからって、無節操に撃とうとする主人公というのもどうかと思うが……。