オタク話0002:"仮面ライダーギーツ"総括
献辞
総括を書かせるに値する番組を作ってくれた"仮面ライダーギーツ"製作スタッフとキャストの皆様方と、総括を書かせる動機を与えてくれた喜多哲士様へ。
1."仮面ライダーギーツ"は迷走にあらず:裏筋は確かに一本通っていた
リアルタイムで見ていた人の評価・感想と、一年三ヶ月遅れで見ていた私の評価・感想を同列に並べるな、とされればそこまでだけど。
"仮面ライダーギーツ"は迷走した、と指摘する感想があった
(ぼやき日記:迷走する仮面ライダーギーツ)
けども、自分は
「逆サイド、運営側からこの番組を見れば、"仮面ライダーギーツ"は迷走していなかった」
と言う結論だった。
で、章の表題なんだけど、この作品の裏筋が
「長寿番組が停滞して迷走、破綻するまで」
実際、"デザイアグランプリ"は、
英寿が登場すれば必ず英寿が勝つマンネリ化状態
に陥ってしまっていた(ジーンのように英寿を応援するオーディエンスだけではない)のをてこ入れしなければならない局面に追い込まれていた。
そこで、あの手この手で英寿の排除を図ったのだが、
ギロリは英寿の排除に躍起になる余り、「番組に自身が参戦する」ルール違反を犯したので粛清せざるを得なくなる。
ニラムが「(運営の過剰な介入は)リアリティショー番組の範疇を超えている」と運営のやり方に異議を唱えたので粛清せざるを得なくなる。
さらには、ギロリとニラムに加えて
"デザイアグランプリ"番組内やられ役=ジャマトに感情移入する余り、ベロバと手を組んで造反するアルキメデル。
の登場でも分かるように、"デザイアグランプリ"はスタッフを統制できなくなるという、末期症状を起こしていたんだよね。
さらには、
"デザイアグランプリ"優勝賞品「優勝者の願いが叶った世界をつくる」ための動力源である"創世の力"を英寿に持って行かれたため、番組が存続の危機に陥り、スエルが奪取を図ろうとして失敗、優勝賞品を手配出来無くなった事と番組主催者のスエルが討ち死にしたために番組存続不能=打ち切り。
と言う話の裏筋だった。
とは言え、
「番組自体は一年で売りきりとは言え、長寿シリーズ(2000年の"仮面ライダークウガ"から2022年の"仮面ライダーギーツ"まで休みなく続いています)で、裏筋が『長寿番組が停滞して迷走、破綻するまで』の作品を作るのは、相当にチャレンジしたなぁ」
という感想に至った。
それで以て、
2."仮面ライダーギーツ"は迷走にあらず:吾妻道長と桜井景和のこと
英寿以外のメインライダーの事についても先に(英寿については次項で)。
桜井景和は一貫して「世界平和=世界の人々が幸せに相争うことなく暮らせる世界」を願っていて、その亜種として「『"デザイアグランプリ"で退場=消滅した人がよみがえる世界』="デザイアグランプリ"に人生を狂わされた人がいなくなる世界」を願っていた。
(ジットとケケラ、ベロバにその願いの逆を突かれて、"デザイアグランプリ"で退場=消滅した無法者たちもよみがえる世界="世紀末ゲーム"を作られてしまった。景和が最初に参加した"デザイアグランプリ"で一発逆転を狙うギャンブラー崩れが登場したように、"デザイアグランプリ"に参加する人間が全員真人間とは限らない)
で、もう一人、ジャマト化した、と言う事情があるとは言え反"デザイアグランプリ"のベロバにつき、最終的には英寿に付いたという、
「叛服常ない」
と受け取られかねない吾妻道長だけど、
彼の行動は、
親友の人生を狂わせたギーツをぶっ潰す。
→潰し合いでお互いの人生を狂わせる仮面ライダーをぶっ潰す。
→仮面ライダー同士で潰し合いをさせる"デザイアグランプリ"をぶっ潰す。
→"デザイアグランプリ"を復興させようとする未来人をぶっ潰す。
で
「人の人生を狂わせる相手に対して容赦しない」
で一貫しているんだよね。
3.実は選択肢のない運営。加えて浮世英寿のこと。
>異次元から来た連中はギーツが自分の世界を再構築するとは予想できてなんだはずやから、もとの世界に帰らんという選択肢はないはず。
(ぼやき日記:迷走する仮面ライダーギーツ)
と書いているけども、
運営側にしてみれば、
英寿から"創世の力"を取り戻さなければ、"デザイアグランプリ"優勝賞品「優勝者の願いが叶った世界をつくる」事ができずに番組続行不能になるだけ。
だから、
英寿にへばりついて"創世の力"奪取を計る
以外に選択肢が無いんだよね。
それで以て、その英寿のことだけど、
元々彼が
「勝負師の凄み、或いは冷徹さ」
だけじゃ無くて
「人としての熱さや情の深さ」
を持っているのも確か(景和が参加した最初の"デザイアグランプリ"で、難病にかかっていた息子がいて治療のための医療チームと多額の医療費が必要になった選手がいて、彼が退場=消滅した際にその息子のために何も言わず、名乗らずに医療チームと多額の医療費を手配したことがあった)で。
その上彼も、2.で書いたような景和や道長の本心に触れたことも相まった結果、
ミツメと再会したと思ったら英寿の目の前で消滅という衝撃を受けながらも、
「自分の目的は達成して終わってしまったのだから、もうどうでもいいや」
と全てを投げ出さずに、
「誰もが幸せになろうと願って努力すれば幸せになれる」
世界を構築した、んじゃないのかなぁ。
4.高橋悠也氏が書く「仮面ライダーの『本筋』」
最終回を見て思ったのが、
「仮面ライダーが、『仮面ライダーを作った組織(この作品では運営のこと。ケケラも広い意味では運営に加担した側)に反逆する』物語」
として幕、ってのは、
本郷猛=仮面ライダー1号からしてそうだったし、"仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション"も「反逆の物語」だったんだよなぁ。
で、"仮面ライダーギーツ"と"仮面ライダー 令和 ザ・ファースト・ジェネレーション"の脚本を執筆した高橋悠也氏にしてみれば、
そこが"仮面ライダー"の「本筋」
として把握しているって事なんだろうなぁ。
とは言え、手放しで「全面賞賛」とは言えない瑕疵もあって……。
5.五十嵐大智五十鈴大智に関する「大詰めの『詰めの甘さ』」(ラブライバーの元後輩に人名表記ミスを指摘されたので、修正)
実のところ、彼が"仮面ライダーゲーム(景和とケケラの直接対決)"で景和の側に付いたのは「ケケラに『裏切られた』報いを『裏切り』で返した」で説明が付くけども、
そのまま
「ジャマトの管理・育成者としての責任と使命に目覚めて、"終幕のデザイアグランプリ"においてジャマトに人間を襲わせないように命じる」
に至った経緯の描写が抜け落ちていると感じたのは私だけか?
(最終回の大智自身の願いに「人とジャマトが共存出来る世界をつくる」とあったから、彼が「ジャマトの管理・育成者としての責任と使命に目覚めた」のは間違いないのだが)
他にも、blogで書けない一言日記:令和6年11月3日の"仮面ライダーギーツ"#48「創世X:ツムリの鎮魂歌(レクイエム)」(裏感想)でも書いたように
大詰めでの「詰めの甘さ」
があったのは庇いきれないなぁ。
追記、"blogで書けない一言日記"令和6年11月3日
"仮面ライダーギーツ"#48「創世X:ツムリの鎮魂歌(レクイエム)」(裏感想)
blogではああ書いたけども、
ギロリって、
「VIPのリクエストによる殺し合いショーと化したデザイアグランプリを望んでいないオーディエンス」の声に従うようなヤツ
だったか?
「英寿を"デザイアグランプリ"から追放させるのに躍起になるあまり、『自身が"デザイアグランプリ"に直接参戦する』という、『番組の規約違反』を犯して失脚したゲームマスター」
でしかなかったような記憶があるんだがなぁ。
スエル=旧運営サイドに造反するのが、
「VIPのリクエストによる『仮面ライダー同士の殺し合いショー』と化している!こんなのは最早"デザイアグランプリ"ではない!」
と唱えるニラムだったり、
(創世の女神=ナビゲイターのなれの果て、と言う事を知らないという条件付きで)
「ナビゲイター=ツムリに"創世の女神"をやらせたり"破滅の女神"をやらせるという『ナビゲイター以上の職責』を負わせる運営にはついていけない!」
と唱えるチラミだったりするのであれば、おかしくないのだけど、
ギロリじゃなぁ。
(理由は上記の通り)
元々、未来人に対して影響力を持てない鞍馬親娘が、
「もし"終幕のデザイアグランプリ"から手を引いたら、身柄は鞍馬財閥が保証します」
と言って説得したけども、
説得力が皆無では?
(現代人VIPオーディエンスを説得したのかもしれないが、光聖氏が失脚してしまっているしなぁ)
大詰めで詰めを誤った感満載
だなぁ。
それでも
総評
"仮面ライダーギーツ"は"仮面ライダーゼロワン"以来の総括を書きたくなるような作品(しかも"仮面ライダーゼロワン"とは違ってポジティブベースの)だった。
高橋悠也氏の脚本単独執筆でしっかりと話を組めたことも大きいけど、
何より"仮面ライダーゼロワン"、"仮面ライダーリバイス"での、
年内好スタート、年明けてから迷走
(終始低調の"仮面ライダーセイバー"は論外として)
の悪癖が無かったどころか、
年が明けてギアを一段上げてきた
事が何よりも大きかった。
(年が明けても、年明けから登場する「真の巨悪」が「運営サイド」で一貫していたのが功を奏したか)